2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧

小説『踏切の幽霊』の感想

高野和明の小説「踏切の幽霊」は、都会の片隅にある踏切で撮影された心霊写真と、その踏切で相次ぐ列車の非常停止事件をめぐるミステリー小説である。 主人公は、雑誌記者の松田。彼は、読者からの投稿をもとに、この心霊ネタの取材に乗り出すが、やがて彼の…

小説「川のほとりに立つ者は」の感想

物語の主人公は、カフェの店長を務める原田清瀬(はらだきよせ)である。清瀬は、ある日、恋人の松木圭吾(まつきけいご)がバイクで事故に遭い、意識不明になったという連絡を受ける。清瀬は、松木の病室に駆けつけるが、彼の容態は思わしくなかった。 清瀬…

小説「光のとこにいてね」の感想

一穂ミチ著「光のとこにいてね」は、7歳、15歳、29歳と、四半世紀にわたって出会いと別れを繰り返す二人の女性の物語である。裕福な家に育つ結珠(ゆず)と、シングルマザーの元で団地に暮らす果遠(かのん)という、境遇も価値観も異なる二人の少女は、7歳…

小説「私たちの世代は」の感想

小説「私たちの世代は」は、瀬尾まいこによる2023年刊行の小説。2020年の新型コロナウイルス感染症の流行を背景に、その影響を受けた世代の若者たちを描いた作品。 物語は、2020年4月、新型コロナウイルスの感染拡大により、学校が休校になり、外出自粛が始…

小説「墨のゆらめき」の感想

三浦しをんさんの小説「墨のゆらめき」は、都内の老舗ホテルに勤務する続力(つづき・ちから)が、招待状の宛名書きを依頼しに訪れた書家の遠田薫(とおだ・かおる)に、副業の手紙の代筆を手伝うはめになってしまったところから始まる物語です。 続力は、真…

小説「変な家」の感想

「変な家」は、雨穴による日本のホラー小説である。 本作は、ある一軒の奇妙な家をめぐる物語である。その家は、間取りが不自然で、窓がない部屋や、行き止まりの階段が存在する。また、その家には、不気味な噂がつきまとっている。 ある日、オカルト系フリ…

小説『月の立つ林で』の感想

青山美智子の小説「月の立つ林で」は、5人の主人公の視点から、それぞれの人生の転機を描いた作品です。 主人公の1人、元看護師の三浦美希は、長年勤めた病院を辞め、新しい人生を模索しています。彼女は、偶然出会ったタケトリ・オキナという男性に導かれ、…

小説『夜果つるところ』の感想

恩田陸の小説「夜果つるところ」は、2023年に刊行された長編小説です。同年11月には第167回直木賞を受賞しました。 本作は、1930年代の日本を舞台に、遊廓「墜月荘」で暮らす少女「私」の物語です。私には、三人の母親がいます。孔雀の声真似をする産みの母…

小説『ハヤブサ消防団』の感想

小説「ハヤブサ消防団」は、池井戸潤による日本の小説です。 本作は、東京でミステリー作家として活動していた三馬太郎が、亡き父の故郷であるハヤブサ地区に移り住むところから始まります。太郎は、地元の人の誘いで居酒屋を訪れた際、消防団に勧誘されます…

小説『invert II 覗き窓の死角』の感想

相沢沙呼の小説「invert II 覗き窓の死角」は、2020年に講談社から出版されたミステリー小説です。霊媒探偵の城塚翡翠が、死んだはずの人物が生きていると主張する女性の依頼を受けて事件を解決していく物語です。 この小説は、前作「invert 城塚翡翠倒叙集…

小説『感応グラン=ギニョル』の感想

空木春宵の『感応グラン=ギニョル』は、2021年に出版された短編集です。全5編からなる本作は、それぞれ異なる世界観と登場人物が描かれており、SF、ホラー、ミステリーなど、様々なジャンルの要素が織り交ぜられています。 表題作「感応グラン=ギニョル」…

小説「図書館のお夜食」の感想

本作は、東京の郊外にある「夜の図書館」を舞台に、主人公の樋口乙葉が、図書館で働くことで、本の魅力や、働くことの意味を学んでいく様子を描いた物語です。 乙葉は、東北の書店で働いていたが、恋人に振られ、仕事も辞め、東京にやってきた。彼女は、SNS…

小説「街とその不確かな壁」の感想

物語は、ある日、ふと立ち寄った古い書店で、主人公が「街とその不確かな壁」という本の存在を知るところから始まります。その本は、1920年代にフランスで出版されたもので、その内容は、ある男が、ある日、ふと立ち寄った街で、不思議な壁に出会うというも…

小説「この夏の星を見る」の感想

辻村深月さんの小説「この夏の星を見る」は、コロナ禍で制限された夏休みの中で、天文部で出会った高校生たちが成長していく姿を描いた物語です。 物語の主人公は、天文部に所属する高校2年生の星野真理。真理は、幼い頃から星が好きで、天文部に入部しまし…

小説『くもをさがす』の感想

西加奈子さんの小説『くもをさがす』は、2021年にカナダで乳がんと診断された著者の闘病記です。著者は、日本で暮らす母親に手紙を書く形で、病気の発覚から治療、そして寛解までの約8ヶ月間を克明に綴っています。 小説は、著者が日本で暮らす母親に手紙を…

小説「ラブカは静かに弓を持つ」の感想

安壇美緒さんの小説「ラブカは静かに弓を持つ」を読んで、とても感動しました。この小説は、著作権管理団体に勤務する橘樹が、ある音楽教室に潜入調査することになるところから始まります。橘は、幼い頃にチェロを習っていたものの、ある事件をきっかけにチ…

小説「宙ごはん」の感想

町田そのこさんの小説「宙ごはん」は、複雑な家庭環境で育った少女・宙が、料理を通して成長していく物語です。 宙は、母親の花野と父親の風海の間に生まれました。花野は、絵を描くことに夢中で、宙をほとんど構っていません。風海は、仕事に忙しく、宙に愛…

小説「三千円の使いかた」の感想

小説「三千円の使いかた」は、2017年に中央公論新社から刊行された原田ひ香の小説です。2018年には第154回直木賞候補作にもなりました。 この小説は、ある日、突然3,000円を拾った女性・田中久美子を中心に描かれています。久美子は、普段は派遣社員として働…

小説「オオルリ流星群」の感想

伊与原新さんの小説「オオルリ流星群」を読みました。 物語は、28年ぶりに再会した高校時代の同級生たちが、手作りの天文台を建てるという計画を実行していく過程を描いています。 主人公の種村久志は、高校時代は天文部に所属していたが、大学進学後、天文…

小説「魔女と過ごした七日間」の感想

東野圭吾の小説「魔女と過ごした七日間」は、2023年にKADOKAWAから刊行されたミステリー小説です。 AIによる監視システムが強化された近未来の日本。指名手配犯捜しのスペシャリストだった元刑事が殺害された。その事件を追う中で、少年は不思議な女性・円華…

小説「君のクイズ」の感想

小川哲さんの小説「君のクイズ」は、クイズ番組の決勝戦で奇跡的な勝利を収めた青年・三島玲央と、彼の勝利に疑問を抱くクイズマニアの女性・小川美月を中心に描かれたミステリー小説です。 三島玲央は、普段はごく普通の青年ですが、クイズ番組の決勝戦で、…

小説「推し、燃ゆ」の感想

宇佐見りんさんの小説「推し、燃ゆ」は、アイドルを応援する高校生・あかりの物語です。あかりは、家庭や学校でうまくいかず、いつも生きづらさを感じていました。そんなある日、あかりはアイドルグループ「THE IDOLM@STER」のいとうまさきくんと出会います…

小説『成瀬は天下を取りにいく』の感想

宮島未奈さんの小説『成瀬は天下を取りにいく』を読みました。この小説は、中学2年生の成瀬あかりが、周囲の期待をよそに、自分の夢を追いかける姿を描いた青春小説です。 成瀬は、周囲から「天才」と呼ばれている、とても頭が良い少女です。しかし、彼女は…