浅倉秋成「6人の嘘つきな大学生」を読んでみた
浅倉秋成の小説「6人の嘘つきな大学生」は、2021年に刊行された青春ミステリーである。成長著しいIT企業「スピラリンクス」が初めて行う新卒採用において、最終選考に残った6人の大学生が、チームを組んでディスカッションをする課題を与えられる。しかし、本番直前に課題が変更され、一人だけが内定を得るというルールに変更される。内定を勝ち取るために、それぞれが嘘や裏切りを重ねていくが、その過程で意外な真実が明らかになっていく。
この小説は、ミステリーとしての面白さはもちろん、就活の闇や人間の弱さを鋭く描いている点も魅力である。就活生たちは、内定を勝ち取るために、自分の本心や価値観を隠し、嘘をつき、相手を裏切る。しかし、その過程で、彼らは次第に自己嫌悪に陥り、心を蝕まれていく。
特に、主人公の波多野祥吾は、就活に失敗した過去を持ち、内定を絶対に勝ち取らなければならないという強い思いを抱いている。そのため、彼は嘘や裏切りを重ねていくうちに、次第に歪んでいく。しかし、彼は最終的に、自分の嘘や裏切りを正すことで、自分を取り戻していく。
この小説は、就活生だけでなく、社会人にも共感できる作品である。私たちも、仕事や人生において、自分の本心や価値観を隠し、嘘をつき、相手を裏切ることがあるだろう。しかし、その結果、私たちは次第に自己嫌悪に陥り、心を蝕まれていく。
この小説は、私たちに、嘘や裏切りの危険性と、自分の本心や価値観を大切にすることを伝えてくれる作品である。
以下に、この小説の具体的な感想を述べる。
- ミステリーとしての面白さ
この小説は、ミステリーとしての面白さも十分に備えている。本番直前に課題が変更され、一人だけが内定を得るというルールに変更されるという展開は、読者の予想を大きく裏切るものであり、驚きと興奮を与えてくれる。また、各登場人物の嘘や裏切りが、どのようにして事件の真相につながっていくのか、その伏線の張り方も巧みで、最後まで目が離せない。
- 就活の闇や人間の弱さを描く
この小説は、就活の闇や人間の弱さを鋭く描いている点も魅力である。就活生たちは、内定を勝ち取るために、自分の本心や価値観を隠し、嘘をつき、相手を裏切る。しかし、その過程で、彼らは次第に自己嫌悪に陥り、心を蝕まれていく。
特に、主人公の波多野祥吾は、就活に失敗した過去を持ち、内定を絶対に勝ち取らなければならないという強い思いを抱いている。そのため、彼は嘘や裏切りを重ねていくうちに、次第に歪んでいく。しかし、彼は最終的に、自分の嘘や裏切りを正すことで、自分を取り戻していく。
この小説は、就活生だけでなく、社会人にも共感できる作品である。私たちも、仕事や人生において、自分の本心や価値観を隠し、嘘をつき、相手を裏切ることがあるだろう。しかし、その結果、私たちは次第に自己嫌悪に陥り、心を蝕まれていく。
- 自分の本心や価値観を大切にすること
この小説は、私たちに、嘘や裏切りの危険性と、自分の本心や価値観を大切にすることを伝えてくれる作品である。
波多野祥吾は、就活に失敗した過去から、内定を絶対に勝ち取らなければならないという強い思いを抱いている。そのため、彼は嘘や裏切りを重ねていくうちに、次第に歪んでいく。しかし、彼は最終的に、自分の嘘や裏切りを正すことで、自分を取り戻していく。
このことから、私たちは、嘘や裏切りによって、一時的に成功したとしても、それは本当の成功ではないということを学ぶことができる。本当の成功とは、自分の本心や価値観を大切にし、正しく生きることである。
この小説は、私たちに、人生において大切なことを教えてくれる、意義深い作品である。
雨穴著「変な家」を読んでみた
小説「変な家」は、雨穴によるホラー小説である。2022年11月に出版され、2023年12月現在、電子書籍版は累計100万部を突破している。
本作の主人公は、不動産会社に勤める小谷。ある日、小谷は「カタブチ家」という、奇妙な間取りの古民家を担当することになる。間取り図には、壁に隠された扉や、地下室など、不自然な構造が描かれていた。小谷は、カタブチ家を調査するうちに、その家にまつわる恐ろしい秘密を知ることになる。
本作の最大の魅力は、その「間取り図」である。間取り図は、物語の冒頭から徐々に明かされていくのだが、その奇妙な構造は、読者の好奇心を刺激する。また、間取り図には、物語の重要なヒントが隠されている。
例えば、間取り図には、地下室の存在が示されている。地下室は、カタブチ家にまつわる恐ろしい秘密の中心となる場所である。また、間取り図には、壁に隠された扉が描かれている。この扉は、カタブチ家の中に隠された、もう一つの世界への入り口である。
本作の物語は、間取り図を軸に、徐々に謎が解き明かされていく。謎が解き明かされるたびに、読者は「変な家」の恐ろしさに引き込まれていく。
また、本作は、ホラー小説としてだけでなく、ミステリー小説としても優れている。物語の終盤には、思わぬ展開が待ち受けており、読者を驚かせる。
本作の結末は、読者の想像力をかき立てるものである。カタブチ家の恐怖は、物語の結末とともに、読者の心に残り続けるだろう。
以下に、本作の具体的な感想を述べる。
まず、本作の「間取り図」の描写は、非常にリアルで、読者の想像力を刺激する。間取り図には、壁に隠された扉や、地下室など、不自然な構造が描かれている。これらの構造は、読者の好奇心を掻き立て、物語に引き込む力がある。
また、間取り図には、物語の重要なヒントが隠されている。例えば、地下室の存在は、カタブチ家にまつわる恐ろしい秘密の中心となる場所である。また、壁に隠された扉は、カタブチ家の中に隠された、もう一つの世界への入り口である。
これらのヒントをもとに、読者は物語の謎を解き明かしていくことになる。謎が解き明かされるたびに、読者は「変な家」の恐ろしさに引き込まれていく。
次に、本作の物語は、徐々に謎が解き明かされていく展開が、非常に面白い。物語の冒頭では、カタブチ家にまつわる謎は、ほとんど明かされていない。しかし、物語が進むにつれて、謎が少しずつ解き明かされていく。
謎が解き明かされるたびに、読者は「変な家」の恐ろしさに引き込まれていく。また、謎が解き明かされるたびに、新たな謎が生まれ、物語はさらに面白くなっていく。
また、本作の結末は、思わぬ展開が待ち受けており、読者を驚かせる。カタブチ家の恐怖は、物語の結末とともに、読者の心に残り続けるだろう。
最後に、本作は、ホラー小説としてだけでなく、ミステリー小説としても優れている。物語の終盤には、思わぬ展開が待ち受けており、読者を驚かせる。
また、本作は、家族の絆や、遺伝子の問題など、さまざまなテーマを扱っている。ホラー小説としてだけでなく、ミステリー小説として、そして社会派小説としても読むことができる。
総合的にみて、本作は、非常に面白く、読み応えのある作品である。ホラー小説やミステリー小説が好きな人には、ぜひおすすめしたい。
凪良ゆう『汝、星のごとく』を読んでみた
凪良ゆう氏の小説「汝、星のごとく」は、2023年本屋大賞を受賞した作品である。瀬戸内の島に住む高校生、暁海と、京都からの転校生、櫂の恋愛を軸に、それぞれが抱える孤独や欠落、そして周囲の人々との関係を描いた物語である。
本作の魅力は、まず何と言っても、登場人物の魅力だろう。暁海は、家庭環境に恵まれず、孤独感を抱えた少女である。しかし、芯が強く、まっすぐな性格で、周囲の人々に好かれる存在である。櫂は、自由奔放な母親に振り回され、居場所を見失った少年である。しかし、聡明で、自分の信念を貫く強さを持っている。
そんな二人が出会い、惹かれ合っていく様子は、瑞々しく、胸を打つものがある。しかし、二人の恋愛は、決して平坦なものではない。それぞれの家庭環境や、周囲の人々の思惑が絡み合い、二人の関係は、幾度となく試されることになる。
そんな中で、二人は、お互いの存在を大切にしながら、成長していく。暁海は、櫂との出会いを通じて、自分の可能性を信じるようになり、櫂は、暁海との恋愛を通じて、本当の意味での自由を手に入れていく。
本作は、恋愛小説であると同時に、家族の物語でもある。暁海の母親は、自由奔放な性格で、家庭を顧みない。しかし、その裏には、家族を愛する強い気持ちがある。櫂の父親は、妻と息子の不仲に苦しんでいる。しかし、息子のことを深く愛しており、彼の幸せを願っている。
登場人物一人ひとりの複雑な感情が丁寧に描かれており、家族とは何か、愛とは何かを、改めて考えさせられる。
また、本作は、瀬戸内の島を舞台にしており、その風景が美しく描かれている。青い海、白い砂浜、そして澄んだ空気。そんな自然の中で、二人は、かけがえのない時間を過ごしていく。
瀬戸内の島の美しい風景が、二人の恋愛をより一層、ロマンチックに彩っている。
本作は、恋愛小説でありながら、家族の物語であり、そして、瀬戸内の島の風景を描いた作品でもある。さまざまな要素が融合し、深みのある物語となっている。
以下に、本作の具体的な感想をいくつか挙げる。
- 暁海と櫂の恋愛の描き方が、とても丁寧で、胸を打つものがあった。二人が惹かれ合っていく様子、そして、すれ違い、そして再び惹かれ合っていく様子が、とてもリアルに描かれている。
- 登場人物一人ひとりのキャラクターが、とても魅力的だった。暁海の芯の強さとまっすぐさ、櫂の聡明さと強さ、そして、暁海の母親の自由奔放さ、櫂の父親の苦悩など、それぞれのキャラクターが、とても印象に残った。
- 瀬戸内の島の風景が、とても美しく描かれていた。青い海、白い砂浜、そして澄んだ空気。そんな自然の中で、二人が過ごす時間は、とてもロマンチックだった。
全体的に、とても読み応えのある作品で、何度も読み返したくなる作品である。
白井智之「名探偵のいけにえ」を読んでみた
白井智之の「名探偵のいけにえ」は、病気も怪我も存在せず、失われた四肢さえ蘇る、奇蹟の楽園ジョーデンタウンを舞台とした本格ミステリーである。
物語は、助手の小鳥遊を捜しにジョーデンタウンを訪れた探偵・大塒が、次々と起こる不審な死に遭遇するところから始まる。大塒は、奇蹟を信じる人々が暮らすジョーデンタウンで、現実世界のロジックが通用しない殺人事件に挑んでいく。
本作の最大の特徴は、特殊な設定と多重解決である。ジョーデンタウンという奇蹟の楽園という設定は、本格ミステリーとしてはあまり見られない斬新なものであり、読者の興味を惹きつける。また、多重解決という手法により、読者は真相を推理する楽しさを味わうことができる。
本作は、特殊な設定と多重解決という手法により、本格ミステリーファンのみならず、幅広い読者層に楽しめる作品となっている。
以下では、本作の各要素について、より具体的に考察していきたい。
特殊な設定
本作の舞台となるジョーデンタウンは、病気も怪我も存在せず、失われた四肢さえ蘇る、奇蹟の楽園である。この設定は、本格ミステリーとしては異色であり、読者の興味を惹きつける。
ジョーデンタウンという設定は、本作のテーマである「奇蹟」を象徴するものである。本作では、奇蹟は単なる超常現象ではなく、人々の信仰によって実現されるものとして描かれている。
ジョーデンタウンには、奇蹟を信じる人々が集まっている。彼らは、奇蹟によって病気や怪我を治し、幸せな生活を送っている。しかし、その裏では、奇蹟によって引き起こされる悲劇も存在する。
本作では、ジョーデンタウンという特殊な設定を活かして、奇蹟の持つ二面性、そして信仰の危うさなどが描かれている。
多重解決
本作は、多重解決という手法を用いている。多重解決とは、一つの事件に対して複数の解決策を提示する手法である。
本作では、四つの密室殺人事件が起こる。大塒は、これらの事件を解決するために、さまざまな推理を展開する。
大塒の推理は、いずれも一見、正しいように思える。しかし、読者は、各事件の真相が明らかになるにつれて、大塒の推理が必ずしも正しいわけではないことに気づく。
本作の多重解決は、読者に真相を推理する楽しさを味わわせるものとなっている。また、真相が明らかになるまでの過程は、読者の予想を裏切る展開が多く、スリリングな読後感を与えてくれる。
推理の面白さ
本作の推理は、緻密かつ論理的であり、読者を唸らせるものとなっている。
大塒は、奇蹟という特殊な設定を前提とした、多角的な推理を展開する。彼の推理は、必ずしも現実世界のロジックに従ったものではないが、説得力があり、読者の納得を得るものとなっている。
また、本作には、さまざまな伏線が張られている。これらの伏線は、真相を明らかにする上で重要な役割を果たしており、読み返すたびに新たな発見がある。
総評
「名探偵のいけにえ」は、特殊な設定と多重解決という手法により、本格ミステリーファンのみならず、幅広い読者層に楽しめる作品となっている。
本作は、奇蹟の持つ二面性、そして信仰の危うさなどをテーマに、緻密かつ論理的な推理を展開する。また、さまざまな伏線が張られており、読み応えのある作品となっている。
梶井基次郎「檸檬」を読んで
梶井基次郎の「檸檬」は、1925年に発表された短編小説である。主人公の「私」は、得体の知れない憂鬱な心情に駆られ、いつものように丸善書店を訪れる。そこで、一枚の檸檬を見つけた「私」は、檸檬を買い、丸善書店の屋上から投げ捨てる。そして、「私」は、檸檬を投げたことで、何かが変わったような気がする。
この作品は、憂鬱な心情に苛まれている主人公が、檸檬との出会いによって、新たな世界へと踏み出す様子を描いたものである。
まず、主人公の憂鬱な心情は、作品の冒頭から鮮烈に描かれている。主人公は、いつものように丸善書店を訪れるが、いつもの景色にもなぜか憂鬱を感じてしまう。そして、丸善書店の屋上から街を見下ろすと、街のすべてが「灰色」に見える。
この憂鬱な心情は、主人公の病状を暗示していると考えられる。主人公は、作品中では具体的な病名は明かされていないが、肺結核を患っていたのではないかと考えられている。肺結核は、当時の日本では不治の病であり、患者は次第に衰弱していき、死に至る病であった。
主人公の憂鬱な心情は、病状の悪化によって、さらに深刻なものになっていく。作品中盤、主人公は、丸善書店の屋上で、檸檬を投げ捨てるといういたずらを思いつく。このいたずらは、主人公の鬱屈した心情の表れであると考えられる。
しかし、檸檬を投げ捨てたことで、主人公の心境に変化が起こる。檸檬が街の景色に映える様子を見て、主人公は、何かが「変わった」ような気がする。そして、主人公は、檸檬を投げ捨てたことで、新たな世界へと踏み出すことができるのではないかと考えるようになる。
この変化は、檸檬の象徴的な意味合いによってもたらされたと考えられる。檸檬は、酸味と甘味、そして爽やかな香りを兼ね備えた果物である。また、檸檬は、西洋においては、浄化や再生のシンボルとしても用いられる。
つまり、檸檬は、憂鬱な心情に苛まれていた主人公にとって、新たな世界への扉を開く象徴であったと考えられる。檸檬との出会いによって、主人公は、憂鬱な心情から解放され、新たな世界へと踏み出すことができるのである。
この作品は、憂鬱な心情に苛まれている人々に、希望を与えてくれる作品である。檸檬との出会いによって、主人公は、新たな世界へと踏み出すことができるのである。
また、この作品は、梶井基次郎の詩的な文体も特徴的である。梶井基次郎は、色彩や形、音など、五感に訴えるような表現を得意とした作家である。この作品でも、丸善書店の屋上からの眺めや、檸檬の色彩や形、香りなどが、鮮やかに描かれている。
これらの表現によって、読者は、主人公の憂鬱な心情や、檸檬との出会いによってもたらされた変化を、より深く感じることができるのである。
以上のように、「檸檬」は、憂鬱な心情に苛まれている人々に、希望を与えてくれる作品である。また、梶井基次郎の詩的な文体も、この作品の魅力の一つであると言えるだろう。
小林多喜二「蟹工船」を読んで
小林多喜二の「蟹工船」は、1929年に発表されたプロレタリア文学の代表作である。北海道の羅臼沖で蟹缶詰工船の労働者として働く男たちの過酷な労働と生活を描いた作品で、当時の労働者の悲惨な実態を告発するとともに、労働者階級の団結と革命への希望を訴えるものとなっている。
私は、この作品を読んで、当時の労働者の置かれた過酷な状況を強く実感した。主人公の「雨宮」をはじめとする労働者たちは、過酷な労働と低賃金に苦しみながらも、それでも生きていくために必死で働いている。しかし、彼らの努力もむなしく、次々と病気や事故で命を落としていく。
特に、主人公の「雨宮」の死は、この作品の悲劇性を象徴している。雨宮は、労働者たちの団結と革命を理想としていた青年だった。しかし、彼は過酷な労働と病気によって、ついにその理想を実現することなく命を落としてしまう。
この作品は、当時の労働者の悲惨な実態を描いただけでなく、労働者階級の団結と革命への希望を訴えるものでもある。雨宮は、死の直前に、労働者たちが団結して革命を起こし、自分たちが生きる世界を変えなければならないと訴える。
この雨宮の訴えは、現代にも通じる普遍的なメッセージである。現代社会においても、労働者の権利や待遇は十分に保障されているとは言えない。労働者の団結と闘いによって、より良い社会を実現するために、私たちは雨宮の訴えを受け継いでいかなければならない。
この作品のもう一つの特徴は、その簡潔な表現である。小林多喜二は、プロレタリア文学の創始者として、労働者階級の人々にも読みやすい作品を追求した。そのため、この作品には、難しい言葉や抽象的な表現はほとんど使われていない。
しかし、その簡潔な表現の中にも、労働者の悲惨な実態や、労働者階級の団結と革命への希望が、力強く表現されている。小林多喜二の卓越した表現力によって、この作品は、現代に生きる私たちにも、深い感銘を与える作品となっている。
以下に、この作品のいくつかの印象的な場面を紹介する。
- 主人公の雨宮が、労働者たちの団結と革命を訴えるシーン
「みんな、団結しよう。団結して、この社会を変革しよう。俺たちの生きる世界を、俺たちの手でつくろう。」
このシーンは、この作品のクライマックスとも言える場面である。雨宮は、過酷な労働と病気によって、ついにその理想を実現することなく命を落としてしまう。しかし、彼の訴えは、労働者たちの心に深く刻まれ、彼らの闘いの原動力となっていく。
- 労働者たちが、過酷な労働と低賃金に苦しむシーン
「蟹の足を剥く。剥いた蟹の足を缶詰にする。缶詰にした蟹の足を船倉に積む。それだけの仕事。毎日、毎日、同じことを繰り返す。朝から晩まで、休む暇もない。」
このシーンは、当時の労働者の過酷な労働の実態を、ありのままに描いたものである。労働者たちは、人間らしい生活を送ることすら許されず、ただひたすら労働に追われていた。
- 労働者たちが、病気や事故によって命を落とすシーン
「蟹工船で働く労働者の死亡率は、他の職業の何倍も高い。病気や事故によって、次々と命を落としていく。」
このシーンは、当時の労働者の命の軽さを象徴しているものである。労働者たちは、ただ労働力として利用される存在であり、その命は、何の価値も持たなかった。
以上のように、「蟹工船」は、当時の労働者の悲惨な実態を描いただけでなく、労働者階級の団結と革命への希望を訴える、現代にも通じる普遍的なメッセージを持つ作品である。小林多喜二の卓越した表現力によって、この作品は、現代に生きる私たちにも、深い感銘を与える作品となっている。
村上春樹「ノルウェイの森」を読んで
村上春樹の「ノルウェイの森」は、1987年に刊行された長編小説である。主人公のワタナベは、大学で医学を専攻する学生である。ワタナベは、大学の同級生である木村と緑に恋をし、その恋愛を通して、死や喪失、青春の終わりなどを見つめていく。
この作品は、村上春樹の代表作の一つであり、日本国内だけでなく、海外でも高い評価を受けている。その理由は、以下の2点が考えられるだろう。
1つ目の理由は、作品のテーマが普遍的であるということだ。この作品は、死、喪失、青春の終わりなど、誰もが経験するようなテーマを扱っている。そのため、多くの読者が共感し、自分の人生を振り返るきっかけになるだろう。
2つ目の理由は、村上春樹の独特な文体であるということだ。村上春樹は、日常をモチーフにした作品を多く発表しており、その文体は、淡々とした語り口の中に、どこか懐かしさや切なさを感じるものだ。この作品も、村上春樹の独特な文体が存分に活かされており、読者を作品の世界に引き込んでいく。
私は、この作品を初めて読んだとき、主人公のワタナベの心情に強く共感した。ワタナベは、木村と緑という、まったく異なるタイプの女性に恋をする。木村は、ワタナベの憧れの存在であり、緑は、ワタナベにとって特別な存在である。ワタナベは、木村と緑の両方を求めるが、その願いは叶わず、苦悩する。
私は、ワタナベの苦悩を、自分自身の青春時代の恋愛を思い出しながら読んだ。自分も、ワタナベと同じように、誰かに恋をして、その恋が叶わずに苦しんだことがある。そんな経験を持つ人なら、きっとワタナベの心情に共感できるだろう。
また、この作品は、死や喪失というテーマも重要な要素となっている。ワタナベの親友であるキズキは、緑の恋人でもあった。キズキは、自殺によって命を落とす。ワタナベは、キズキの死によって、大きな喪失感を味わう。
死は、誰もが避けられない存在である。しかし、死を受け入れることは、決して容易なことではない。この作品は、死や喪失というテーマを、淡々とした語り口で描いている。しかし、その中には、死の意味や、喪失感を乗り越える方法など、深い考察が込められている。
この作品は、青春の終わりや、死や喪失など、人生の普遍的なテーマを扱った作品である。村上春樹の独特な文体で紡がれた、この作品は、多くの読者に、深い感動を与えてくれるだろう。
以下に、この作品の印象的なシーンをいくつか紹介する。
- ワタナベと木村が、夜の街を歩くシーン。
このシーンでは、ワタナベと木村の、淡い恋心が描かれている。二人は、夜の街を歩きながら、お互いのことを見つめ合う。その様子は、まるで、映画のワンシーンのようである。
- ワタナベが、緑の部屋で、緑の遺品を見つめるシーン。
このシーンでは、ワタナベの、緑への深い愛情が描かれている。ワタナベは、緑の部屋で、緑の遺品を見つめながら、彼女との思い出を振り返る。その様子は、とても切なく、胸を打つものがある。
- ワタナベが、キズキの墓参りをするシーン。
このシーンでは、ワタナベの、キズキへの深い友情が描かれている。ワタナベは、キズキの墓参りをする中で、彼との思い出を回想する。その様子は、とても悲しく、そして、美しい。
これらのシーンは、この作品の重要なポイントであり、読者の心に深く刻まれるだろう。
