小林多喜二「蟹工船」を読んで

小林多喜二の「蟹工船」は、1929年に発表されたプロレタリア文学の代表作である。北海道の羅臼沖で蟹缶詰工船の労働者として働く男たちの過酷な労働と生活を描いた作品で、当時の労働者の悲惨な実態を告発するとともに、労働者階級の団結と革命への希望を訴えるものとなっている。

私は、この作品を読んで、当時の労働者の置かれた過酷な状況を強く実感した。主人公の「雨宮」をはじめとする労働者たちは、過酷な労働と低賃金に苦しみながらも、それでも生きていくために必死で働いている。しかし、彼らの努力もむなしく、次々と病気や事故で命を落としていく。

特に、主人公の「雨宮」の死は、この作品の悲劇性を象徴している。雨宮は、労働者たちの団結と革命を理想としていた青年だった。しかし、彼は過酷な労働と病気によって、ついにその理想を実現することなく命を落としてしまう。

この作品は、当時の労働者の悲惨な実態を描いただけでなく、労働者階級の団結と革命への希望を訴えるものでもある。雨宮は、死の直前に、労働者たちが団結して革命を起こし、自分たちが生きる世界を変えなければならないと訴える。

この雨宮の訴えは、現代にも通じる普遍的なメッセージである。現代社会においても、労働者の権利や待遇は十分に保障されているとは言えない。労働者の団結と闘いによって、より良い社会を実現するために、私たちは雨宮の訴えを受け継いでいかなければならない。

この作品のもう一つの特徴は、その簡潔な表現である。小林多喜二は、プロレタリア文学創始者として、労働者階級の人々にも読みやすい作品を追求した。そのため、この作品には、難しい言葉や抽象的な表現はほとんど使われていない。

しかし、その簡潔な表現の中にも、労働者の悲惨な実態や、労働者階級の団結と革命への希望が、力強く表現されている。小林多喜二の卓越した表現力によって、この作品は、現代に生きる私たちにも、深い感銘を与える作品となっている。

以下に、この作品のいくつかの印象的な場面を紹介する。

  • 主人公の雨宮が、労働者たちの団結と革命を訴えるシーン

「みんな、団結しよう。団結して、この社会を変革しよう。俺たちの生きる世界を、俺たちの手でつくろう。」

このシーンは、この作品のクライマックスとも言える場面である。雨宮は、過酷な労働と病気によって、ついにその理想を実現することなく命を落としてしまう。しかし、彼の訴えは、労働者たちの心に深く刻まれ、彼らの闘いの原動力となっていく。

  • 労働者たちが、過酷な労働と低賃金に苦しむシーン

「蟹の足を剥く。剥いた蟹の足を缶詰にする。缶詰にした蟹の足を船倉に積む。それだけの仕事。毎日、毎日、同じことを繰り返す。朝から晩まで、休む暇もない。」

このシーンは、当時の労働者の過酷な労働の実態を、ありのままに描いたものである。労働者たちは、人間らしい生活を送ることすら許されず、ただひたすら労働に追われていた。

  • 労働者たちが、病気や事故によって命を落とすシーン

蟹工船で働く労働者の死亡率は、他の職業の何倍も高い。病気や事故によって、次々と命を落としていく。」

このシーンは、当時の労働者の命の軽さを象徴しているものである。労働者たちは、ただ労働力として利用される存在であり、その命は、何の価値も持たなかった。

以上のように、「蟹工船」は、当時の労働者の悲惨な実態を描いただけでなく、労働者階級の団結と革命への希望を訴える、現代にも通じる普遍的なメッセージを持つ作品である。小林多喜二の卓越した表現力によって、この作品は、現代に生きる私たちにも、深い感銘を与える作品となっている。