石川啄木「悲しき玩具」を読んで

石川啄木の「悲しき玩具」は、1912年に没後の遺稿集として刊行された、啄木の第二歌集である。前作の「一握の砂」が、甘美な抒情に満ちた歌が多くを占めるのに対し、「悲しき玩具」は、啄木の晩年の苦悩と葛藤を反映した、切迫した生活感情を、虚無的な暗さの中に表現した歌集となっている。

歌集のタイトル「悲しき玩具」は、啄木の友人であった土岐哀果がつけたものである。このタイトルは、啄木の人生そのものを、幼い頃から病気や貧困に苦しみ、やがて自殺という悲劇的な結末を迎えた、悲しい玩具に譬えたものである。

歌集の冒頭には、次の歌が置かれている。

貧しさの風に吹かれかへす命悲しき玩具

この歌は、啄木の人生を象徴するような歌であり、歌集全体のテーマを端的に表している。啄木は、病弱で貧乏な家庭に生まれ、幼い頃から苦労を重ねてきた。そして、その苦難を乗り越えようと、懸命に文学の道を歩み続けた。しかし、結局は、その苦難に押しつぶされ、35歳という若さで自殺という悲劇的な死を遂げた。

「悲しき玩具」には、啄木のこうした人生の苦悩と葛藤が、さまざまな形で表現されている。

例えば、次の歌は、啄木の家庭の貧困と不和を描いた歌である。

かたづかない暮らし子も病んでゐる悲しき玩具

この歌は、啄木が当時暮らしていた家が、いつも散らかっていて、妻や子供が病気で苦しんでいる、という現実を、悲痛な筆致で描いている。また、次の歌は、啄木の文学への苦悩を表現した歌である。

書きかけの詩かげろうの上に悲しき玩具

この歌は、啄木が書きかけの詩を、かげろうのように儚く消えてしまうのではないかと、不安に感じている様子が表現されている。

このように、「悲しき玩具」には、啄木の人生におけるさまざまな苦悩と葛藤が、切実に表現されている。その表現は、時に激しく、時に静かに、しかし、常に深い悲しみと絶望に満ちている。

「悲しき玩具」は、啄木の代表的な歌集であり、日本の近代文学を代表する作品の一つである。この歌集は、啄木の人生を、そして、彼の時代を生きた人々の苦悩と葛藤を、深く理解する上で、欠かすことのできない作品である。

以下に、「悲しき玩具」の中から、特に印象的な歌をいくつか挙げてみたい。

空に浮ぶ月思ひの月影悲しき玩具

この歌は、啄木が自殺直前に詠んだ歌である。この歌は、啄木の死後、彼の遺書として知られることとなった。この歌は、啄木の死後の世界への憧れと、現実への絶望を、同時に表現している。

かたづかない暮らし子も病んでゐる悲しき玩具

この歌は、冒頭で紹介した歌である。この歌は、啄木の家庭の貧困と不和を、簡潔ながらも、切実に表現している。

書きかけの詩かげろうの上に悲しき玩具

この歌も、冒頭で紹介した歌である。この歌は、啄木の文学への苦悩を、儚く消えてしまうかげろうに喩えて表現している。

これらの歌は、いずれも啄木の人生や、彼の時代を生きた人々の苦悩と葛藤を、深く考えさせてくれるものである。