浅倉秋成「6人の嘘つきな大学生」を読んでみた

浅倉秋成の小説「6人の嘘つきな大学生」は、2021年に刊行された青春ミステリーである。成長著しいIT企業「スピラリンクス」が初めて行う新卒採用において、最終選考に残った6人の大学生が、チームを組んでディスカッションをする課題を与えられる。しかし、…

雨穴著「変な家」を読んでみた

小説「変な家」は、雨穴によるホラー小説である。2022年11月に出版され、2023年12月現在、電子書籍版は累計100万部を突破している。 本作の主人公は、不動産会社に勤める小谷。ある日、小谷は「カタブチ家」という、奇妙な間取りの古民家を担当することにな…

凪良ゆう『汝、星のごとく』を読んでみた

凪良ゆう氏の小説「汝、星のごとく」は、2023年本屋大賞を受賞した作品である。瀬戸内の島に住む高校生、暁海と、京都からの転校生、櫂の恋愛を軸に、それぞれが抱える孤独や欠落、そして周囲の人々との関係を描いた物語である。 本作の魅力は、まず何と言っ…

白井智之「名探偵のいけにえ」を読んでみた

白井智之の「名探偵のいけにえ」は、病気も怪我も存在せず、失われた四肢さえ蘇る、奇蹟の楽園ジョーデンタウンを舞台とした本格ミステリーである。 物語は、助手の小鳥遊を捜しにジョーデンタウンを訪れた探偵・大塒が、次々と起こる不審な死に遭遇するとこ…

梶井基次郎「檸檬」を読んで

梶井基次郎の「檸檬」は、1925年に発表された短編小説である。主人公の「私」は、得体の知れない憂鬱な心情に駆られ、いつものように丸善書店を訪れる。そこで、一枚の檸檬を見つけた「私」は、檸檬を買い、丸善書店の屋上から投げ捨てる。そして、「私」は…

小林多喜二「蟹工船」を読んで

小林多喜二の「蟹工船」は、1929年に発表されたプロレタリア文学の代表作である。北海道の羅臼沖で蟹缶詰工船の労働者として働く男たちの過酷な労働と生活を描いた作品で、当時の労働者の悲惨な実態を告発するとともに、労働者階級の団結と革命への希望を訴…

村上春樹「ノルウェイの森」を読んで

村上春樹の「ノルウェイの森」は、1987年に刊行された長編小説である。主人公のワタナベは、大学で医学を専攻する学生である。ワタナベは、大学の同級生である木村と緑に恋をし、その恋愛を通して、死や喪失、青春の終わりなどを見つめていく。 この作品は、…

大岡昇平「野火」を読んで

大岡昇平の「野火」は、1944年12月にレイテ島で捕虜となった日本兵の視点で、戦争の残酷さと人間の尊厳を描いた戦争文学の代表作である。 主人公の田村は、レイテ島の戦闘で病に倒れ、軍隊からも病院からも追放される。彼は、フィリピンの山中で、他の脱走兵…

小説「ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人」の感想

東野圭吾の小説「ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人」は、2020年に刊行されたミステリー小説である。主人公の真世の父親が殺害された後、音信不通だった叔父の武史が現れ、自らの手で犯人を見つけることを宣言する。真世は武史に協力し、二人は父親の…

石川啄木「悲しき玩具」を読んで

石川啄木の「悲しき玩具」は、1912年に没後の遺稿集として刊行された、啄木の第二歌集である。前作の「一握の砂」が、甘美な抒情に満ちた歌が多くを占めるのに対し、「悲しき玩具」は、啄木の晩年の苦悩と葛藤を反映した、切迫した生活感情を、虚無的な暗さ…

小説「近畿地方のある場所について」感想

背筋著の小説「近畿地方のある場所について」は、2023年12月20日に刊行された近畿地方の山奥にあるある場所にまつわる怪談集である。 本作は、インターネット上の掲示板に投稿された怪談を、筆者が取材と調査を経て再構成したものである。怪談の語り手は、近…

宮沢賢治「銀河鉄道の夜」を読んで

宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」は、1934年に発表された童話作品である。孤独な少年ジョバンニが、友人カムパネルラと銀河鉄道の旅をする物語で、宮沢賢治童話の代表作のひとつとされている。 この作品は、その美しい情景描写と、少年たちの友情と死を描いた感動…

小説「キリエのうた」感想

小説「キリエのうた」は、岩井俊二監督の同名映画の原作小説です。主人公のキリエは、歌うことでしか自らを表現できない路上ミュージシャンです。彼女は、13年間の時を経てそれぞれ必死に生きる3人の人物と繋がっていく物語です。 この小説の魅力は、まず、…

中島敦「山月記」を読んで

中島敦の短編小説「山月記」は、唐代に詩人となる夢を叶えられず、虎になってしまった男・李徴の物語である。この作品は、中島のデビュー作であり、彼の代表作として知られている。 「山月記」の主人公・李徴は、幼い頃から詩才に恵まれ、将来は名詩人になる…

「成瀬は天下を取りにいく」を読んで

宮島未奈の小説「成瀬は天下を取りにいく」は、2023年3月に新潮社から刊行されたデビュー作である。中学生の時から「天下を取る」という夢を抱く成瀬あかりの、周囲の人々を巻き込んでいく青春小説である。 主人公の成瀬は、とにかく自由奔放で、自分の信じ…

太宰治「人間失格」を読んで

太宰治の「人間失格」は、1948年に発表された中編小説である。主人公の大庭葉蔵は、幼い頃から他人との関係に苦しみ、社会に適応することができず、やがて「道化」として生きていくようになる。その過程を、葉蔵自身の言葉で描いた作品である。 この作品は、…

芥川龍之介「地獄変」を読んで

芥川龍之介の「地獄変」は、1918年に発表された短編小説である。説話集『宇治拾遺物語』の「絵仏師良秀家の焼くるを見て悦ぶ事」を基に、芥川が独自に創作したものである。 物語は、絵師の良秀が、妻の阿古にモデルを頼み、地獄変を描こうとするところから始…

夏目漱石「こころ」を読んで

夏目漱石の代表作「こころ」は、1914年に発表された長編小説である。主人公の「私」が、ある日、かつて教師をしていた「先生」から手紙を受け取るところから物語は始まる。手紙には、先生の友人である「K」が、ある事件をきっかけに自殺したことが記されてい…

劉慈欣「三体」の感想

劉慈欣著「三体」は、2006年に中国で刊行されたSF小説の三部作である。2015年に英訳され、世界的なベストセラーとなった。 「三体」は、地球と三体文明との遭遇を描いた物語である。三体文明は、太陽が不安定な軌道を描く恒星系に存在する。そのため、三体人…

小説「同志少女よ、敵を撃て」の感想

逢坂冬馬の小説「同志少女よ、敵を撃て」は、1942年の独ソ戦を舞台に、少女狙撃手たちの戦いと成長を描いた作品である。 物語の主人公は、モスクワ近郊の農村に暮らす少女セラフィマ。彼女は、ドイツ軍の侵攻によって母親を殺され、自らも命を狙われる。しか…

小説「運転者 未来を変える過去からの使者」の感想

喜多川泰氏の小説「運転者 未来を変える過去からの使者」は、中年になって歩合制の保険営業に転職した主人公・修一が、挫折や困難を乗り越えて成長していく姿を描いた作品である。 主人公の修一は、30代半ばで会社を辞め、家族を養うために保険営業に転職す…

小説「満月珈琲店の星詠み」の感想

望月麻衣の小説「満月珈琲店の星詠み」は、京都の路地裏にある喫茶店「満月珈琲店」を舞台に、星詠みをしている店主の真澄と、さまざまな悩みを抱えた客たちが出会い、癒され、成長していく物語である。 物語の主人公は、新卒で就職した会社を半年で辞めて、…

小説「プロジェクト・ヘイル・メアリー」の感想

アンディ・ウィアーの小説「プロジェクト・ヘイル・メアリー」は、2021年に出版されたSF小説です。地球が氷河期に突入する危機に瀕し、人類は未知の生命体アストロファージの脅威を排除するために、宇宙飛行士グレースを送り出すという物語です。 この小説は…

小説「君のクイズ」を読んで

小川哲氏の小説「君のクイズ」は、2023年11月20日に発売された、競技クイズを題材としたミステリー小説である。 主人公は、大学時代からクイズに没頭する青年・黒木。彼は、クイズを通じて出会った仲間たちと共に、クイズ大会で優勝することを夢見て日々努力…

小説「汝、星のごとく」を読んで

凪良ゆうさんの小説「汝、星のごとく」は、2015年に刊行された恋愛小説である。主人公の男女は、幼い頃から親に翻弄されながら生きてきた。二人は出会い、惹かれあうが、周囲の人間関係やそれぞれの過去のトラウマによって、すれ違い、苦しんでいく。 この小…

小説「777 トリプルセブン」の感想

伊坂幸太郎の小説「777 トリプルセブン」は、2002年に刊行された「マリアビートル」の続編にあたる作品です。前作では、新幹線の中での殺し屋同士の戦いが描かれていましたが、本作では、超高級ホテルの一室を舞台に、殺し屋、ヤクザ、裏社会の工作員など、…

小説「あなたが誰かを殺した」の感想

東野圭吾の小説「あなたが誰かを殺した」は、2023年4月に刊行されたミステリー小説である。加賀恭一郎シリーズの第3作であり、2022年に刊行された「マスカレード」から4年ぶりのシリーズ最新作である。 物語は、静かな別荘地で起きた連続殺人事件から始まる…

小説「星を編む」の感想

凪良ゆうの小説「星を編む」は、2022年11月15日に発売された、小説「汝、星のごとく」のスピンオフ作品である。本作では、小説「汝、星のごとく」で描かれた北原さんと暁海さんを中心に、彼らを取り巻く人々のその後の物語が描かれている。 本作は、大きく分…

小説「これは経費で落ちません! 11 ~経理部の森若さん~」の感想

青木祐子の小説「これは経費で落ちません! 11 ~経理部の森若さん~」は、経理部の森若沙名子が、社員の不正経費申請を鋭い観察眼と推理力で暴き、真相を明らかにしていく物語である。 本作の11巻では、森若は、新入社員の朝倉翔太が、会社の経費を私的に使用…

小説「レモンと殺人鬼」の感想

くわがきあゆの小説「レモンと殺人鬼」は、2023年に刊行されたミステリー小説である。主人公の美桜は、ある日、同じマンションに住む男性・高橋から誘われて、彼の部屋でレモンとチキンを食べることになった。しかし、その夜、高橋が殺害される事件が起きて…